こんにちは。着付け教室「きらら」のアシスタント、ゆうです。
今回は着物の柄のお話。
突然ですが私もご多分に漏れず鬼滅の刃大好きです!!推し柱は、派手を掌る祭りの神、宇髄天元さま。従ってアニメシリーズ第2期が待ち遠しくて仕方ありません。音柱の魅力について語らせたら10,000字でも足りません。
なので今回は、
「鬼滅の刃」に見る和柄、古典柄の魅力
鬼滅の刃が爆発的ヒットに繋がった理由は100,000字でも足りませんが、その一つに物語全体に流れる和の魅力があると思われます。
子供たちは登場人物の衣装に夢中になりグッズ発売が待てず、お母さんたちは手芸屋さんに殺到しました。求むは和柄の布地です。未だかつて無い和柄人気が到来したのでした。
物語は大正時代、日本に西洋の価値観が浸透し、和と洋が徐々に混じり合った世界です。
時代を超えて鬼を滅する者たち、鬼殺隊は和魂を持って、敵に立ち向かっていきます。
炭治郎らの着物や柄について、諸方面で語られていますが、本記事では着付け教室アシスタントで日本史学科卒で民俗学をちょっぴりかじったあわたゆうが考察を加えて参ります。以下コミックスネタばれを含みます。
炭治郎の市松模様~限りない不滅の心~
炭治郎の羽織の柄は初登場時から緑と黒の市松模様です。(鱗滝さんの所で修行しているときは波模様)

市松模様の歴史は古く、日本では人型埴輪の衣類に見られ、法隆寺、正倉院にも裂(きれ)が残されています。正方形を配し交互に色を変えた市松模様は、世界的にも人々が古くから親しんできた柄でした。有職故実では石畳、霰模様と呼ばれます。
一般庶民に大人気となったのは江戸時代中期以降です。歌舞伎役者佐野川市松が紺と白の交互柄を舞台衣装にした所、大人気を博し、民衆の間にも流行しました。
市松模様は柄が途切れることなく続くため、末永く続く、永遠に途切れないという意味を持っています。
これこそ鬼滅の刃の最も重要なテーマ、不滅の心ではないですか。
お館さま、産屋敷耀哉さまは言いました。
「永遠というのは人の想いだ。人の想いこそ永遠であり不滅なんだよ」(第137話より)
炭治郎は先祖から続く人の想いを受け継ぐ者です。市松模様の羽織を着ることで、過去に生きた人の想い、不滅の心を背負っているのでしょう。炭治郎の先祖、炭吉も市松柄の着物を着ていました。
鬼のいない安らかな世を願う心、最愛の仲間たちの幸せを願う想い、それこそが永遠、不滅です。
この描写に気付いた時、私は「鬼滅の刃」の奥深さ、吾峠呼世晴先生の発信する人間愛の素晴らしさに胸が震えました。
想いは不滅、市松柄を羽織った炭治郎は初登場の時からずっと私たちにそのことを伝え続けていたのですね。
善逸の鱗柄~水神と雷の関係~
常に人気投票上位の我妻善逸、雷の呼吸の使い手ですが、壱ノ型以外の技が会得できない、女の子大好き、怖いの大嫌い、痛いの嫌と、どこをとっても極めつけのヘタレキャラです。ですが、「雷の呼吸、壱ノ型霹靂一閃は一番かっこいい型!」と、子供たちの絶大な支持を得ています。
善逸の着る羽織は、鱗柄をちょっとアレンジしたもので、散りばめた三角と鮮やかな黄色が雷を彷彿とさせます。

本来の鱗柄は三角形が交互に並び、歌舞伎や能では水神、竜、蛇、女の執念を表すものでした。また鱗で身を護るという意味で厄除け、魔除けにも用いられます。
善逸の着物の柄が女の執念を意味するというのも言い得て妙ですが、固い鱗によって身を護る、とはいかにも善逸らしい気がします。
魔除けの柄を着せるというのは、善逸の師匠、桑島慈悟郎じいちゃんの、弟子たちに対する深い愛ですね。善逸の兄弟子、獪岳は嫌がって絶対に着なかったというのも、いかにもらしいエピソードです。
私の住む島には鬼太鼓という伝統芸能が伝わっています。起源は不明ですが、鬼太鼓の鬼はなまはげのような客人神(まれびとがみ)であり各家に角付けし、舞いにより魔を払い幸運と春を呼び込みます。

島の鬼はよく見かける(?)虎のパンツではなく、鱗柄の衣装に脚絆をつけています。豪快に飛び、低く腰を落として舞う姿はに猗窩座少し似ています。
鱗柄の鬼は水神、海から来る精霊を表し、島の春は海がもたらすものと考えられていたのでしょう。
水神が雷に繋がるものはないか、調べてみました。
古代中国では雷鳴や落雷があると、「天が竜を取る」との言葉があるそうです。
「竜は樹々や家の中に隠れていて、雷がそれらを破壊すると竜は姿を現わし、雷を取って天に昇る」(後漢『論衡』)
普段は身を隠し、家が破壊されると雷を掴んで天に昇る、それって正に善逸ではないですか!
竜は鳴き声によって雲を呼び嵐や雷雲をもたらし、竜巻となります。
日本でも干ばつが続くと竜神に供物を捧げ、雨乞いの祈祷が執り行われました。
いずれにしても水神(竜)と雷、雷雨といった天候の間には密接な関係があると信じられていたようです。
鬼太鼓の鬼は、水神、天候の神、春を呼びこむ春雷の化身と言えるかもしれません。
魔除けのため、鱗柄を着せたじいちゃんの愛も深いですが、善逸くんの脳内がいつも春のお花畑だと思うと、納得しきりの柄選びです。
禰津子の麻の葉模様~着物に籠めた母の願い~
禰豆子は黒羽織の下に麻の葉模様の着物、ピンクの市松柄の帯を締めています。大正時代、一般庶民の女児がお太鼓を結び、帯締め、帯揚げをしている姿はちょっと時代考証的に誤りでは、と思われますが、現代っ子のイメージする着物姿とはこうした装いとなるのでしょう。
麻の葉は六角形を基本にした直線模様です。

日本では縄文時代の遺跡から麻の実が見つかっていますし、公家以外の衣服は麻で織られたものでした。耐久性があり通気もよいことから庶民の衣服として長く親しまれています。私も夏の襦袢には麻を愛用しています。←安いし、涼しいのです。
麻は生命力が強く、成長が早いことから麻の葉模様は子供の成長を願う柄とされています。次々に生まれ出る新葉にあやかり、子孫繁栄の意味も持っています。
日本の親は子供、特に女児の健やかな成長を願って、麻の葉模様の着物や産着を着せました。
ここで思い出すのが、炭治郎、禰豆子のお母さん、
那田蜘蛛山で窮地に陥った炭治郎。お母さんの亡霊は必死に禰豆子に語りかけます。
「禰豆子、起きて、お兄ちゃんを助けるの。今の禰豆子ならできる。ごめんね、お兄ちゃんまで死んでしまうわよ」
麻の葉の着物には母から子へ「生きてほしい!」との願いが籠っています。
禰津子が生まれた時、お母さんはその健やかな成長と共に、子孫繁栄、良い子をたくさん産む母になってほしいと願いました。家族を守る、命を守る女性になってほしい、と。襧豆子はその願いに答えうる女性に成長し、兄炭治郎を救いました。
「鬼滅の刃」最終巻で禰豆子はあーなってこーなって、母の願い通り子孫繁栄を果たすことができたようですね。
子供の着る服には母の願いが籠っています。
禰豆子は鬼になってしまいましたが、幸福に生きてほしいとのお母さんの願いをいつ何時も身に纏っているのです。
和柄大好き中国人留学生のAくん、再び登場してもらいます。
着付け教室で留学生に着物を体験してもらおうと、先生と二人で20人位浴衣を着せていました。
自分の着付けが終わるとAくんはスマホ画面を私の目の前に差し出します。(私は他の人を着付け中)
彼が見せたスマホ画面はピンクの麻の葉柄が映し出されています。彼はこの柄は何だ?と質問してきました。
彼が鬼滅の刃のファンだったのか、その辺りは確認していません。
別の男子学生の帯を締めあげながら、私は、
これは麻だ。麻の葉模様だ、でも私、今取り込み中、頭が回んない、、、思わず近くで着付けしていた先生にヘルプです。
「先生、このスマホの柄は何か?って質問されました!」
先生も男子学生の帯を締めあげ中、声だけヘルプをくれました。
「麻よ、麻の葉!子供の成長を祈る柄よ」
そうですよね、そう、、、判ってはいるんだ。えーと麻の英名は、、、、、、確かそうHempだ。この間楽天で買った麻紐のブレスレットは、ヘンプアクセサリーって書いてあったもん。
よし!!
「Hemp!hemp’s leaf.」
納得してくれたAくん、そこへ先生の一声が飛び込みます。
「子供の成長を祈る柄って言いなさーい!!」
え?それちょっと私にはハードル高いです、先生!私、着付けの勉強はしてますけど、英語の勉強は中学で止まってます。
Aくんの周りに集まってくる男子学生諸君、逃げも隠れもできません。(着付け中だってばよ!)
「えっと、えー、That’s meaning of 、、、、grow up!for child.」
(子供がおっきくなる的なジェスチャー付き)
もうやけくそ、、、ですが彼らの反応は
「so good!」
「好好!」
だったので多分伝わったのだと思います。
親が子に着せる着物に願いを籠める、きっと彼らの国でも同じような風習が継承されていることでしょう。
鬼滅の刃に登場する着物や柄は一部を除いて、当時の庶民が普通に身に着けていたものです。現代ではその慣れ親しんだ美しさに注目が集まり、和柄の魅力が子供たちに引き継がれています。古くからあるものを大切にして、次代に継承していく、それもまた永遠に途切れない、不滅の想い。
着物も和心も継承していく、それがこのサイトのメインテーマです。
(よし、繋がった!!)







