羽織~着物の上にもう一枚、お助けアイテム~

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1.羽織とはなにか

2.羽織の用途

3.富岡義勇の半々羽織

2020年の暮あたり、着付け教室の先生とこんな会話をしていました。
「先生、今、羽織ブームきてます!!羽織めっちゃ人気です!!」
「知ってるわよ~鬼滅でしょ!!」
「仰る通り!!!」
佐渡島のカフェで熱々のピロシキにかじりつきながら、着付け講師と着付け助講師はこんな話題で盛り上がっておりました。
着物の上に羽織るものと言えば、着物コート、道中着、塵除けコート、ストールやポンチョなど様々な物がありますが、従来は着物コートが主流でした。好雨天兼用のコートは突然雨が降っても安心です。外出時には必ずコートを着用し、着物が汚れるのを防ぐ方が多く見られました。
ですが、私は子供の頃から断然羽織派だったのです!
着物コートはしっかりと着物をガードしてくれますが、肝心の着物の柄は全く見えない仕様になっています。雨コートは足まですっぽりと包まれ、襟を見ないと着物姿なのかもよく判りません。
私の母の箪笥には羽織がいくつか遺されており、コート派が多い中、外出には好んで羽織を着ていました。
なぜ、羽織が好きなのか?記憶をたどってみると、小学生時代、母が参観日に来る服装は和服に黒羽織だったんですよね。
鬼滅の刃の禰豆子ちゃんも黒羽織を着ています。黒羽織は一般的に女児が着るものではないので、あれはお母さんの物を受け継いで着ているのだろうと、私は考えています。
そんなわけで今回は『羽織』のお話。以下、鬼滅の刃、ネタバレを含みます。

1.羽織とは

羽織とは文字通り着物の上に羽織って着るもので、礼装、防寒、防塵に用いられます。丈の長さはその時代の流行を表し、長短が様々です。膝下まで丈があるものを「長羽織」、膝上の長さのものを「中羽織」と呼びます。
羽織は袖を通し、帯前で羽織紐を結んで着用しますが、最近ではマグネット式の紐もあり、天然石を使ったアクセサリー的な物も多くあります。
女性の羽織紐は帯締めの結び方と同じですから、難しくはありません。
羽織の襟は後ろに半分折って着用するので、両面で表地が使われます。折って裏を見せる衣類とは、とても珍しく興味深いです。半分に折ることで着物の衿や柄が美しく見えるので、着物との色目、コーディネートが楽しめます。衣類の主役は着物ですから、羽織には余り自己主張しない色柄が良いと思います。その為に羽織は羽裏の見えない部分に柄を入れることがあり、粋なお洒落感覚と言えるでしょう。羽織は着物姿のナイスな引き立て役です。
羽織はとても便利なお助けアイテムでもあります。
ちょっと今日は冷えるな、という日にはさっと取り出して羽織ることができますし、畳むととてもコンパクトに持ち運びができます。帯の形がうまく決まらなかったときは、羽織が一枚あると隠してくれるので、助かります。袂に小物を入れてポケット替りにもなりますよ。
羽織姿は、凛として行動的に見えるので、私の場合、外出にはもっぱら羽織推しです。

2.羽織の用途

羽織の用途は男性と女性で大きく違います。
男性の紋付羽織は礼装であり、袴着で着用します。結婚式で新郎新婦のお父さんがこうしたスタイルをしています。礼装であるため、きちんとした場で羽織を脱ぐことはありません。紋付、羽織、袴はお殿様の前に出る衣裳と、イメージすればよいかもです。紋無し、カジュアルな羽織は女性羽織と同じ用途です。
女性の羽織はカジュアル用、カーディガンやコートと同じ用途です。女性の礼装に羽織は用いません。防寒、防塵のために着用します。外出時のみ着用するもので、室内で着るのはマナー違反とされます。玄関前で羽織を脱ぎ、畳んで腕に持ちましょう。羽織はとても畳みやすい仕立てになっています。

ここで着物こそこそ噂話
アニメ鬼滅の刃23話「柱合会議」で、柱のみなさんは羽織を着て、会議に参加しています。室内で、しかも夜、お館さまの前で羽織を着てはいけません。男性の羽織はいいんじゃないか、と言われそうですが、柱のみなさんが着ているのは礼装用の羽織ではなく、カジュアルな羽織です。目上の方の目前に座る場合、自前のカジュアルな羽織は脱ぐべきです。この場合隊服こそが礼装となるでしょう。まあ、そりゃみんな同じ隊服姿だと画面がもたないんでしょうけど。

3.富岡義勇の半々羽織

大人気の水柱、富岡義勇さんは半身が別柄の羽織を着ています。義勇さん初登場の場面で、その羽織を見た時、着物のことをよく知っている作者さんだなあと思いました。伊之助は水柱を半々羽織と呼びますが、義勇さんの羽織は片身替りと言います。
昔からある着物のリメイク術の一つでした。歌舞伎役者などが市中をお練りすると、人気者ですから「キャー!富岡さま、素敵―!」と袖を引っ張られてしまいます。着物の袖が何枚も破られてしまうので、ええいもう半分ずつくっつけちまえ、と破れた半身を縫い合わせて着るようになったとか。つまり半々羽織は人気者の証なのですね。義勇さんのような地味で静かな人が何故半羽織を着てるの?と疑問に思いました。答えは後に明らかになります。
義勇さんの羽織、海老色の布地は鬼に殺されたお姉さん、蔦子さんの着物、亀甲柄の布地は自分を庇って亡くなった親友錆兎の物でした。義勇さんは2人分の悲しみを背負っている、という伏線だったんですね。片身は形見に通じる意味だった、ということになります。だから着物好きの人は初めから錆兎が亡くなってるな、って気付いていたのですよ、、、
寸法が変わった、片袖が汚れて使えないなどの理由で着物を片身替りにリメイクすることは日常的に行われていました。ボロボロになった羽織を禰豆子ちゃんが綺麗に繕ってあげた所、義勇さんが大喜びしてプレゼントをいっぱい送ったとファンブック2に書かれています。


着物は継承するもの、傷んでも大切に繕い、着続けていくことで、人の想いも繋がっていきます。

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