こんにちは。佐渡島着付け教室「きらら教室」のアシスタントゆうです。
前回は卒業式に着る着物は色無地1択、とのお話をしました。
今日は色無地などの礼装にはつきもの、家紋のお話をさせて頂きます。
2.女性は実家の紋を継承する
2-1実家紋と婚家紋
2-2地域による風習の違い
1.家紋とは何か
日本の家庭にはどの家にも家紋が伝わっています。家紋とは平安時代に端を発し、家族、一族の証を示す図柄です。若い夫婦が新しい家紋を作る場合もありますが、ほとんどの日本人が「あなたの家紋は何?」と聞けば自分の実家に伝わる紋を「これだよ」と答えるでしょう。
1-1家紋の由来
家紋とは平安時代、外出した際に牛車の所有者を明らかにするための目印として考案されたとされています。(この風習を知ったとき、「お名前シール」じゃん、と思った私、、、)
藤原鎌足、不比等の子孫「藤原四家」の例もあるように、古代から中世にかけて同姓他家が多く存在したのも、家紋が一般的な慣習となった理由と考えます。
1-2家紋の種別
家紋を生業で分類すると、公家紋、武家紋、商家紋などがあります。
公家紋は雅やかで古くからあるものですから、草木柄が多いですね。藤原氏は藤の花紋、菅原道真の菅原氏は、梅花紋など美的な柄を重視しているようです。
反対に武家紋は旗や指物に染め抜き、戦場における目印として発達したので、一目で分かり易く、大柄な物が多いようです。徳川の葵紋や織田信長が用いた木瓜紋などが特徴的です。五三桐(ごさんのきり)紋は豊臣秀吉が用いた紋です。秀吉は農民から成りあがったヒーローですから、多くの農業家がこの紋を家紋としました。
商家は家紋を店の暖簾に染め出し、商売の広告塔とします。ヤマサ醤油の𠆢にサなどですね。職人の家は槌やのみなど使用する器具を図案化したものが多く、とても興味深いです。
私は父方の家紋が違い鷹の羽、母方が五三桐でした。


違い鷹の羽は、武士が矢に使う鷹の羽が交差した図柄です。つまり家紋で先祖の生業が推測できるわけです。(どうりで父方の親戚はみんな厳格だったし、母方の親戚はみんなおおらかだったな、、、)
1-3礼装における紋付の格
女性は実家の紋を継承する、私は母からそのように教わり、実家の五つ紋が入った黒留袖を受け継ぎました。着物の格は紋の数で決まります。留袖は五つ紋が通常で既婚女性の第一礼装となります。一つ紋や三つ紋は準礼装、整理すると以下のようになります。
黒留袖 五つ紋→第1礼装(フォーマル)…結婚式の両親、親族(既婚)
色留袖 五つ紋→第1礼装…(フォーマル)結婚式の両親、親族(未既婚)、叙勲など
色無地 三つ紋→正装~準礼装(ちょっと↑なセミフォーマル)結婚式、お茶会
色無地 一つ紋→準礼装(セミフォーマル)結婚式、入学式、卒業式、法事
黒留袖の五つ紋は基本的に結婚式でしか着ないものと考えて下さい。五つ紋全てがばっちりときれいに見える着付けは格調高く、かっこよく見えます。
一つ紋の色無地は最も汎用性の高い着物です。暗く濃い色目であれば、秋冬の結婚式にも行けますし、卒業式には最適な着物。喪服用の黒帯を締めれば法事にも着用できます。
汎用性を考えると一つ紋の色無地さえあれば、ほとんどの冠婚葬祭は何とかなるわけです。
洋装は慶事と法事で衣服の種類が違い、また夜と昼、時間帯でも着る服が変わってきます。(イブニングドレスとかアフタヌーンドレスとか、何とか)
そうなると一つ紋の色無地ってとってもお得な着物でしょ?
着物に紋をつけると格がぐぐっと上がります。紋の数が増えると更にあげあげに、、、
江戸小紋(微細な柄が全体に染められた着物)に紋を入れる場合もありますが、一見無地に見えるとはいえ、小紋と名のつくものに紋を入れる必要は無い気がします。小紋はおしゃれ着ですからね。江戸小紋は紋無しで、颯爽と街を歩きたいじゃないですか。姉さん、粋だねえぃ!ってなもんで。
2.女性は実家の紋を継承する
2-1.実家紋と婚家紋
地域により風習は異なりますが、私は母から女性は実家の紋を継承すると教わりました。母は着物の仕立師だけでなく、呉服店で営業したり、着付け教室の講師をしたりと着物のエキスパートだったのです。(私んちお金無かったもんでwww)
家紋とは自分がどこから出た者か、その出自を表すものですから公の席で実家の紋を染め抜いた着物を着ることは道理と言えます。結婚前に誂え、もしくは継承した着物は実家紋であるべきです。最近では少ないですが、婚約時に婚家紋を染めた着物を作ったという人がかなりいます。
「お嫁に行く時は婚家紋の留袖、喪服、色無地を作って嫁入り道具にします。これ常識ね」
その常識、間違いですから!!
それこそが呉服店の販売戦略なんですのよ!!!
そんな真似してんのは昭和20年代~60年代までの話です。呉服店が下降気味の着物需要において、高く商品を売ろうとした結果、編み出した非常識です。
よーく考えてみて下さい。結婚する前から相手の家の紋を聞き出して着物を誂えるって至極厚かましい行為じゃないですか?離婚するときその着物どうすんの?って話ですよ。
正しくは結婚前に用意する着物は実家紋、結婚後に誂える着物は婚家紋です。
結婚式で自分だけ親族と紋が違う、と引け目に感じなくていいんです。式場内で家紋はバラバラで当たり前。家紋はユニフォームじゃありません。自分がどこから来たかを示すものです。
結婚前に高いお金をかけて婚家紋の着物を作る必要は無いんです。
だからこそ、留袖や色無地といった礼装用の着物はお母さんやおばあちゃん、叔母さんから頂いてしまいましょう。
着物は継承する衣類です。
2-2.地域による風習の違い、女紋
関西には独特の女紋、という風習があります。女子だけに継承される紋で、曾祖母→祖母→母→娘→孫娘と継承されます。家の中で女性だけが別の紋を持っているわけですね。商家は嫁いだ先でも実家の力を誇示する必要がある為、というのが女紋の由来ですが、私はもう少し根源的な問題のような気がします。
古来、日本は母系社会です。生まれ育った家には女性が残され、通い婚で男性は他家へ迎えられます。平安文学には女児が実母と家に残され生活している描写がよくあります。男性は公職に出仕し、自分で財を成す立場にありましたから、実家は女子のものという慣習だったのでしょう。
広島で呉服に携わっていた母は一度だけ女紋の家系に出会ったことがあるそうです。関西でも珍しくなった女紋ですが、自分のルーツを母系で遡ることは実に意義深く、貴重な史実に行き着くように思います。
3.世界も注目、日本の家紋文化
外国の方に着付けをすることがよくありますが、彼らが和服に寄せる興味関心は日本人のそれを大きく上回っています。着付けをしながら様々な質問がバンバン飛び交います。
しかも私、英語力、0ですからー!もう大変!!
中国の男子学生から、これは何だ?と聞かれたのが男性紋付に染められた五つ紋でした。
私、中国語力も、0ですからー!
あれこれそれこれ、中学校の英語の教科書New Hrizonを脳内でめくりますが、出てきた文言は、
「うーん、えーっと、This is family’s mark.」
もうちょっとかっこいい英文出てこないかなー自分、と内心嘆いていると彼は急に身を乗り出してきました。
「excellent!!」
『我々の国にもかつて家族の紋章というものがあったが、今ではほとんど失われてしまった。日本に紋章が残っていることは非常に素晴らしい』
と、といった感想を熱く述べました。
彼は日本人以上に家紋に興味を持ち、自国で失われた文化を憂いていたのです。彼と同じ年齢の日本男性に「お宅の家紋って何?」と聞いても「さあ、よく知らん」と言われることも多いでしょう。
家紋は単なる柄ではなく、継承すべき文化として世界から注目されていることがわかります。
彼の家紋クエスチョンはまだまだ続きます。
「what’s this pattern?」
彼の指さす家紋は藤紋でした。これぞ日本を代表する家紋です。日本に藤の名のつく人はみな藤原氏の子孫と言います。頭の中をぐるぐると私の古代史知識が巡りました。藤原鎌足に始まり、藤原四家、伊藤さん、佐藤さん、加藤さん、彼らは代々天皇家を補佐する家系で云々、、、あれもこれも説明しなきゃ!
でもどうしても、藤の英名が出てきません。私の知識、なんてドメスティック、、、(激涙)
無い知恵絞って出てきた言葉は、
「、、、、flower」
ごめんね、単語力も無くて。次に彼が来日するまでにもっと英語を勉強します。
藤の英名は「Wisteria」。